股関節に不安がある方

股関節は、太ももの骨(大腿骨)先端の丸い部分が骨盤のくぼみ(臼蓋)にピッタリとはまって、スムーズに動く仕組みになっています。しかし、軟骨がすり減ったりダメージを受けたりすると、骨同士が直接こすれ合って痛みや腫れが生じ、歩くのがつらくなることがあります。
痛んだ股関節の部分(大腿骨の先端と骨盤のくぼみ)を取り除き、その代わりに金属や特殊なプラスチックでできた人工の関節に置き換えます。この人工関節が、健康な股関節のようにスムーズに動く役割を果たします。

人工股関節全置換術について

股関節の変形や痛みが重症な患者様が適応となります。この手術は、股関節の破綻が大きい方が対象となり、骨盤の受け皿・大腿骨の骨頭・大腿骨の中を人工の関節(インプラント)に置き換えます。

人工股関節の手術が適応となる主な股関節疾患

  • 変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)
  • 臼蓋形成不全症(きゅうがいけいせいふぜんしょう)
  • 先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)
  • 大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)
  • リウマチ性股関節炎(りうまちせいこかんせつえん)

人工股関節の手術が適応となる主な症状

1.股関節の強い痛み

  • 歩行や立ち上がり、階段昇降などの日常生活に影響を及ぼす強い痛み
  • 安静時や夜間にも痛みが続く場合

2.関節の可動域制限

  • 股関節の動きが制限され、靴下を履く、正座をする、または座るといった日常動作が困難になる場合

3.関節の変形

  • レントゲンやMRIで確認される股関節の骨変形や関節空隙の消失

4.関節の不安定性

  • 股関節が不安定で、日常的に脱臼やぐらつきを感じる場合

5.重度の関節破壊

  • レントゲン検査で関節軟骨の消失、骨頭の変形、または関節裂隙の狭小化が確認される場合

6.保存的治療の効果がない

  • 鎮痛薬、ヒアルロン酸注射、リハビリテーションなどを試しても症状が改善しない場合

7.外傷や骨折

  • 高齢者の大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折)などで、保存的治療では修復が困難な場合

手術の流れ

人工股関節全置換術を受ける際の入院から退院までの流れについて、以下にご紹介します。
1 入院日

入院手続き

手術前日に病院に入院し、必要な書類や手続きが行われます。
(身体の健康チェックや服用している薬の調整などが必要なときは、手術1週間前程度に入院していただくこともございます)

入院説明

看護師や医療スタッフから、入院中のルールや施設の利用方法、手術当日の流れなどについて説明を受けます。
2 術前の準備

身体検査

手術に向けた最終的な健康チェックが行われます。

手術前の案内

食事制限や服薬の指示があり、手術当日の準備に向けた案内を受けます。通常、手術前の数時間は食事や飲水を控えるよう指示されます。

カウンセリング

手術の流れや麻酔の方法、術後のリハビリテーションについて改めて説明を受けます。わからないことや不安なことがあれば、いつでも担当医や病院スタッフにお尋ねください。
3 手術当日

準備と移動

手術当日は、術衣に着替えた上で待機し、手術室の準備が整い次第、順次手術室に移動します。手術前に再度確認や説明が行われ、安心して手術に臨むためのサポートが行われます。

麻酔

手術は全身麻酔で行われます。麻酔科医が適切な麻酔方法を選び、患者様がリラックスできるよう配慮します。
4 手術後のケア

手術後

手術後は身体の経過観察が行われます。麻酔が覚めてくると、ゆっくりと意識が回復してきます。看護師が付き添い、肺の中の空気をきれいにするために、咳や深呼吸をするよう促します。痛みや不快感があれば、適切な処置が行われます。

病室への移動

身体状態が安定し、レントゲン室で検査を終えたのちに、病室に移動して術後のケアが開始されます。痛みの管理や脚のマッサージを受けます。
5 術後翌日以降

術後リハビリテーション

手術後、専門のリハビリテーションスタッフ(理学療法士)による動作練習や運動療法が開始され、股関節の機能回復をサポートします。

医師のフォローアップ

定期的に医師が診察し、手術後の経過を確認します。必要に応じて追加の治療や指導が行われます。

看護師のケア

入院中は毎日定期的に病室に伺い、術後の看護ケアを行います。検温や血圧測定、全身状態の観察、採血などを行い、手術後の経過を確認します。また、必要に応じて服薬や生活指導も行います。
6 退院準備
術後回復が十分であると医師が判断したら、まもなく退院することができます。
*術後回復には個人差がございます。医師の判断の下、患者様の状態に応じて苑田会系列のリハビリテーション病院へ転院することも可能です。

退院指導

退院が近づくと、自宅でのケアやリハビリテーションの指導が行われます。退院後の生活に必要なアドバイスやフォローアップの予定も説明されます。

退院

医師や看護師の指示に従って、退院準備を整え、無事に自宅へ帰る準備が完了します。退院後は、定期的に医師の診察があります。

退院後の外来リハビリ

退院後は当院に外来通院していただき、週1〜2回の頻度でリハビリテーションを行います。術後の回復状況に応じて、術後3ヶ月程度を目安にリハビリが終了となります。
ご自宅から当院への通院が困難な患者様は、ご自宅近くの病院・クリニックでリハビリをしていただいても構いません。その際には、患者様が通院可能な病院・クリニックを探してきていただけると、スムーズに紹介状の作成ができます。
また、Webを利用したリハビリテーションも提供できますので、ご希望がある患者様はリハビリスタッフへ問い合わせください。

この流れを通じて、安心して人工股関節全置換術を受け、スムーズな回復を目指すことができます。疑問や不安があれば、いつでも医療スタッフに相談してください。

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