膝関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)が合わさってできており、健康な膝ではその間に軟骨があって、スムーズに動かすことができます。しかし、軟骨がすり減ったりダメージを受けたりすると、骨同士が直接こすれ合って痛みや腫れが生じ、歩くのがつらくなることがあります。
手術では、痛んだ膝関節の表面を特殊な精密器具を使って取り除き、その代わりに金属や特殊なプラスチックでできた人工の関節(インプラント)に置き換えます。この人工関節が、正常な膝のように滑らかに動く役割を果たします。

人工膝関節置換術について
人工膝関節置換術は大きく分けて2種類あります
人工膝関節全置換術
膝関節の変形や痛みが重症な患者様が適応となります。
この手術は、膝関節の破綻が大きい方が対象となり、膝関節の表面全体を人工の関節(インプラント)に置き換えます。
人工膝関節単顆置換術
膝関節の変形や痛みが中等度な患者様、または骨の一部が壊死している患者様が適応となります。
この手術は、膝関節の一部分が悪い方が対象となり、悪い部分(膝関節の一部)の表面を人工の関節(インプラント)に置き換えます。
人工膝関節の手術が適応となる主な膝疾患
- 変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
- 大腿骨内顆骨壊死症(だいたいこつないかこつえししょう)
- リウマチ性膝関節炎(りうまちせいしつかんせつえん)
人工膝関節の手術が適応となる主な症状
1.膝の強い痛み
- 日常生活(歩行、階段の昇降、椅子からの立ち上がりなど)に支障をきたすほどの痛み
- 安静時や夜間にも痛みが出現する場合
2.膝関節の変形
- 内反変形(O脚)や外反変形(X脚)が進行し、関節のバランスが崩れている場合
3.関節の可動域制限
- 膝の屈曲や伸展が大きく制限され、日常的な動作が困難な場合
4.関節の不安定性
- 関節が不安定で、歩行時に膝が崩れるような感覚がある場合
5.関節の重度な破壊
- レントゲンやMRIで確認される関節軟骨の完全な消失、骨の変形、または骨棘の形成
6.保存的治療の効果がない
- 薬物療法(鎮痛薬や抗炎症薬)、ヒアルロン酸注射、リハビリテーション、装具療法などを試しても改善が見られない場合
7.関節リウマチやその他の全身性疾患
- リウマチ性関節炎や痛風による関節破壊が進行している場合
8.外傷後の膝関節症
- 膝関節の外傷後に変形性関節症(外傷後関節症)へ進行した場合
手術の流れ
人工膝関節置換術を受ける際の入院から退院までの流れについて、以下にご紹介します。
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1
入院日
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入院手続き
手術前日に病院に入院し、必要な書類や手続きが行われます。
(身体の健康チェックや服用している薬の調整などが必要なときは、手術1週間前程度に入院していただくこともございます)
入院説明
看護師や医療スタッフから、入院中のルールや施設の利用方法、手術当日の流れなどについて説明を受けます。
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2
術前の準備
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身体検査
手術に向けた最終的な健康チェックが行われます。
手術前の案内
食事制限や服薬の指示があり、手術当日の準備に向けた案内を受けます。通常、手術前の数時間は食事や飲水を控えるよう指示されます。
カウンセリング
手術の流れや麻酔の方法、術後のリハビリテーションについて改めて説明を受けます。わからないことや不安なことがあれば、いつでも担当医や病院スタッフにお尋ねください。
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3
手術当日
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準備と移動
手術当日は、術衣に着替えた上で待機し、手術室の準備が整い次第、順次手術室に移動します。手術前に再度確認や説明が行われ、安心して手術に臨むためのサポートが行われます。
麻酔
手術は全身麻酔で行われます。麻酔科医が適切な麻酔方法を選び、患者様がリラックスできるよう配慮します。
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4
手術後のケア
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手術後
手術後は身体の経過観察が行われます。麻酔が覚めてくると、ゆっくりと意識が回復してきます。看護師が付き添い、肺の中の空気をきれいにするために、咳や深呼吸をするよう促します。痛みや不快感があれば、適切な処置が行われます。
病室への移動
身体状態が安定し、レントゲン室で検査を終えたのちに、病室に移動して術後のケアが開始されます。痛みの管理や脚のマッサージを受けます。
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5
術後翌日以降
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術後リハビリテーション
手術後、専門のリハビリテーションスタッフ(理学療法士)による動作練習や運動療法が開始され、膝の機能回復をサポートします。
医師のフォローアップ
定期的に医師が診察し、手術後の経過を確認します。必要に応じて追加の治療や指導が行われます。
看護師のケア
入院中は毎日定期的に病室に伺い、術後の看護ケアを行います。検温や血圧測定、全身状態の観察、採血などを行い、手術後の経過を確認します。また、必要に応じて服薬や生活指導も行います。
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6
退院準備
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術後回復が十分であると医師が判断したら、まもなく退院することができます。
*術後回復には個人差がございます。医師の判断の下、患者様の状態に応じて苑田会系列のリハビリテーション病院へ転院することも可能です。
退院指導
退院が近づくと、自宅でのケアやリハビリテーションの指導が行われます。退院後の生活に必要なアドバイスやフォローアップの予定も説明されます。
退院
医師や看護師の指示に従って、退院準備を整え、無事に自宅へ帰る準備が完了します。退院後は、定期的に医師の診察があります。
退院後の外来リハビリ
退院後は当院に外来通院していただき、週1〜2回の頻度でリハビリテーションを行います。術後の回復状況に応じて、術後3ヶ月程度を目安にリハビリが終了となります。
ご自宅から当院への通院が困難な患者様は、ご自宅近くの病院・クリニックでリハビリをしていただいても構いません。その際には、患者様が通院可能な病院・クリニックを探してきていただけると、スムーズに紹介状の作成ができます。
また、Webを利用したリハビリテーションも提供できますので、ご希望がある患者様はリハビリスタッフへ問い合わせください。
この流れを通じて、安心して人工膝関節置換術を受け、スムーズな回復を目指すことができます。疑問や不安があれば、いつでも医療スタッフに相談してください。