低侵襲脊椎手術について

当センターにおいては積極的に低侵襲脊椎手術を行っています。 腰椎すべり症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア等の腰椎変性疾患や頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性脊髄症等の頚椎変性疾患を対象としております。
また骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対しても早期除痛を目的として低侵襲手術を行っております。

低侵襲脊椎手術の特徴 Minimally Invasive Spinal Surgery(MISS)

長所

  • 筋肉ダメージが少ない、術後疼痛の軽減
  • 出血量の軽減
  • 早期離床、早期退院
  • Cosmeticに有利

短所

  • 手術時間の延長
  • 技術的な困難性
  • 適応が限られる
  • 特殊な器具の必要性
   

腰椎手術

腰椎固定術

腰椎すべり症等の不安定のある腰椎に対する低侵襲腰椎固定術

腰椎すべり症など腰椎の不安定性がある場合には神経の圧迫を取り除いたあとに、不安定な骨同士を固定する必要があります。従来は、10cm以上の皮膚切開を置いて背筋を広範囲に骨からはがして病変部位に達して、除圧及び固定を行っていました。最近は片側に約3~4cm、2cm、1cmの3箇所の皮膚切開を置き、特別な開創器を挿入して、背筋を分けるように病変部に到達して手術を行っています。以下のような特長があります。

  • 皮膚切開が小さいため術後の痛みが従来法に比べ少ない。
  • 入院期間が短縮される。(順調であれば、術後2週間以内に退院できます。)
  • 背筋に対する負担が少ない

但し、病変が3箇所に及ぶ場合や変形が高度な場合はこの手術の適応とはなりません。

従来法と低侵襲手術との皮膚切開の違い

1椎間固定例での比較

従来法

低侵襲手術

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板摘出術(髄核摘出術)に対する低侵襲手術として、特殊な開創器による小切開法及び内視鏡による手術を行っています。

小切開法

小切開法に用いる開創器

  • 22mmの皮切で手術が行えます。
  • 通常の手術であるラブ法と同様な術野が確保されるためほとんどのタイプのヘルニアに対応可能です。

腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡下ヘルニア摘出術

全身麻酔下に、約18mmの皮膚切開を置き、そこから内視鏡を挿入してヘルニアを摘出します。一部の脱出タイプのヘルニア等は困難とされています。

いずれの方法であっても以下のような特徴があります

  • 皮膚切開が小さいため術後の痛みが少ない
  • 背筋に対する負担が少ない
  • 翌日から歩行可能です

頚椎疾患手術

頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症

チタン製金属ケージを用いた頚椎前方固定術

2椎間以内の頚椎前方固定術においてチタン製椎体間ケージを用いた手術を行っています。

頚椎前方固定においては骨盤から骨を移植する必要があります。通常の前方固定術では骨盤からの移植骨を大きくとる(採骨)必要があり、術後、骨盤の痛みが強く入院が長引くケースがありました。チタン製ケージを使用した方法では採骨は小さく(小指の先程度の量)、また専用の器具で採骨するため痛みも少なくてすみます。

また症例によっては採骨不要な症例もあります(術野の切除骨と人工骨を組み合わせること採骨無しですむこともあります)。

関節リウマチに伴う頚椎病変

関節リウマチは関節や脊椎に慢性の炎症を生じる疾患です。

脊椎の関節破壊で特に問題になるのが、頚椎(くびの骨)病変です。頚椎は7つの骨で構成されますが、関節リウマチの患者さんでは1番目と2番目の骨の間の破壊が一般的です(環軸椎亜脱臼)。背骨の中には脊髄という太い神経がとおっており、環軸椎亜脱臼により神経が圧迫されると手足のしびれや筋力低下を生じることがあります。さらに中枢の延髄が圧迫され呼吸障害を発症することがあります。 環軸椎亜脱臼により首の痛みや後頭部の痛み(後頭神経痛)を生じることもあります。また頚椎に伴走する椎骨動脈閉塞を生じ脳への血流障害をきたすことがあります。環軸椎亜脱臼で脊髄や延髄の麻痺(手足のしびれや運動麻痺、呼吸障害)を生じたり、頚部痛がひどくなると手術が必要となることもあります。

 

手術をする場合

不安性のある背骨を金属で固定する方法が一般的です。 現在、当センターでは、種々の画像診断と手術システムを使用することや金属固定器具の使用方法の工夫で以前より安全に手術を行える環境が整っています。

関節リウマチの治療については当院の関節センター医師の協力で各種薬物療法を施行しております。