骨転移の放射線治療
癌の発生した部位(原発巣)から癌細胞が主に血管を介して骨に移動(転移)し、そこで大きくなった状態です。痛みや骨折をきたすことがあります。原発腫瘍の性格を反映するため実際には様々な病態を示します。
頻度的には肺癌・乳癌・前立腺癌・肝癌からの転移が多いのですが、腎癌・甲状腺癌・多発性骨髄腫などは稀な疾患ですが、高率に骨転移をきたします。
癌は全身に広がっているので、抗がん剤やホルモン療法、さらに骨に作用するビスフォスフォネート剤などの薬物療法が必要となります。疼痛緩和療法も欠かせない治療です。
放射線治療の適応
X線画像の特徴から
- 溶骨性転移(骨が無くなり、折れ易くなる)
- 造骨性転移(骨が固くもろくなる)
に分類され、両方の性格を持つものを混合性転移といいます。
溶骨性転移には肺癌、乳癌や肝癌が多く、直ちに放射線治療の適応となります。造骨性転移には前立腺癌や乳癌が多く、症状が無ければ放射線治療の適応は低くなります。
放射線治療の方法
骨に転移した状態では、残された時間が短い方もいれば、病気をもったまま、何年も過ごすことができる方など人それぞれです。
この様に緩和治療では様々な状況に対応する必要があります。このため標準治療法はなく、患者さまの必要に応じて、短期間に痛みを軽くする治療を行ったり、長い間その部位を制御することを目的に、照射をすることがあります。
照射の回数と線量
照射量は患者さまの状態に応じて8グレイ(1回)から40グレイ(20回)を行うことが多く、中でも30グレイ(10回)が最もよく行われています。
いずれの方法も痛みを軽くする効果に差はないのですが、線量が多くなるほど効果持続期間が長いといわれています。
この様に柔軟に照射法が選択できるため、状態の悪い人も含めほとんどの患者さまに照射が可能です。
副作用
治療する部位により異なり、頸部では飲み込むときのしみる感じ、下腹部では便が柔らかくなることがありますが、いずれも軽度です。
悪性硬膜外脊髄圧迫とは
背骨(脊椎)への転移はよく見られますが、ときに脊椎の中(脊柱管)を通る脊髄を圧迫することがあります。
圧迫が胸部に起こると下肢が動かなくなったり、排尿、排便の感覚がわからなくなったりすることがあります。
首のあたりの圧迫ではさらに手も動かなくなり、日常生活に大きな支障が出ます。麻痺が進行すると、治療を行っても症状が改善しなくなります。
悪性硬膜外脊髄圧迫の治療
麻痺が完全に進行しないうちに手術で圧迫がとれればいいのですが、実際にスタッフや手術室の状況が許さず、緊急手術が行われることは稀です。
このため放射線とステロイドなどの除圧剤による緊急治療が行われます。この場合もなるべく早く治療を開始することが肝要です。
麻痺が軽いうちに照射を行うことが、とても大切です。
悪性硬膜外脊髄圧迫の再治療
放射線治療終了後しばらくしてから、同じ骨転移部位が再増大することもあります。
この場合、同じ部位に2度目の放射線をあてることになるため、脊髄症などの重篤な副作用のリスクが高くなります。この様に治療が困難なため、椎体転移の再発に対して、照射を行わない施設もあります。
当院では可能な限り強度変調放射線治療(IMRT)により、脊髄や小腸など周囲臓器に当たる線量を、最小限に抑えながら再照射ができるかを検討します。