前立腺癌の放射線治療
前立腺癌は高齢者に多い癌で年々増加しています。かつては骨転移が初発症状ということが多かったのですが、現在ではPSA検査(血液検査)が普及したため、転移する前に発見される人がほとんどです。排尿の回数が多い(頻尿)や尿の出が悪い(排尿障害)などが主な症状です。しかし、年令とともに前立腺が肥大するため同様の症状がみられます。したがって、症状から病気を発見することは困難です。
治療法の選択
治療法の決定には
- 癌の進行度(癌の進行度を分類したもので、病期分類といわれています)
- PSA値(血液検査でわかる癌の進行度ですが、前立腺肥大や前立腺炎でも上昇します)
- グリソン・スコア(生検した癌の組織を顕微鏡で見て癌の悪性度を分類したもので、2から10のスコアを付けます)
が重要で、この3つの因子から総合的に判定し、低リスク・中リスク・高リスクに分類します。もちろん年令や体の状態(全身状態)や既往歴なども考慮します。
治療法
癌が前立腺に留まっているとき(癌の進行度分類でIからIII期)には、放射線治療や手術療法が選択されますが、両治療の成績に差はありません。70歳以上で悪性度が低い場合は、PSA監視療法(治療を行わないでPSA値で経過を観察)を選択することもあります。リンパ節や骨に転移があるときには、ホルモン療法が選択されます。
放射線治療の長所と短所
長所
治療の効果は手術との同等性が示されていますが、手術と比較した放射線治療の長所は治療後の生活の質(QOL ; Quality of Life)を高く保てる点です。手術では高率に勃起不全などの性機能障害や尿漏れが認められますが、放射線治療では頻度が低く症状も軽微です。また体への負担が少ないため、高齢者でも可能で通院治療が原則です。
短所
週5回の照射をおよそ2か月間(7週間から8週間)行うことです。
1回ごとの照射時間は数分と短いのですが、飲水などの前処置があるため、これを含めると毎回の治療時間は1時間以上かかります。また、便通が一定していないと前立腺の位置が便に押されたりして移動するため排便やガスの管理も必要です。
放射線治療の方法
放射線治療には
- 高精度外部照射法
- 密封小線源永久挿入療法
という2種類の方法があります。
癌は前立腺内に広く分布していることが多く、前立腺全体を均等に照射することが重要です。
当院の高精度外部照射法 (IMRT)
前立腺の周囲には直腸と膀胱が接しており、これらに当たる線量をできるだけ少なくして、前立腺全体に十分な量を当てることが求められます。このため当院では画像誘導放射線治療(IGRT) を駆使した、強度変調放射線治療(IMRT)治療を行っています。IMRTはコンピュータを駆使した照射方法で、この要求を満たすことができます。数ミリ離れた部位の線量を低くすることが可能です。
しかしながら、そのように複雑な形で照射が可能でも、実際に照射する時に、中心がずれたまま照射されると前立腺に十分な線量を照射できません。これでは再発の原因となったり、副作用の原因となります。
当院の高精度外部照射法 (IGRT)
当院では強度変調放射線治療(IMRT)治療時の位置合わせのために、画像誘導放射線治療(IGRT) を行っています。IGRTは位置のずれを画像を用いて正確に確認、修正します。
当院のIGRTは治療装置(リニアック)に搭載された、位置合わせ専用のCT装置にて行います。
毎回の治療直前に照射用の寝台上でCTを撮影し、放射線治療計画時のCT画像と照合し、立体(3次元)的なずれ検出します。そしてそのずれはロボット寝台(6軸寝台)により、コンピュータ制御下に自動的に正確かつ確実に修正されます。
前立腺癌の照射範囲
齋藤勉、関口建次 他 著
ベストエビデンス放射線治療(金原出版株式会社)より抜粋
副作用
放射線治療期間中には、尿の回数が多くなることがしばしば見られます。尿が出にくくなったり、排尿時痛がでることもあります。また痔が起こることもあります。しかし、これらの症状は通常は放射線治療が終了して数週間すれば元に戻ります。
放射線治療後半年~2年頃に、排便の際に便に血がつくといった、痔の出血に似た症状が出現することがあります。これは直腸からの出血で、10%から30%の方に見られます。
これは放射線治療に特異的な副作用です。多くの場合は適切な治療を行うことで治癒します。また、治癒が遷延して直腸から出血が時々あっても、普段の生活に大きな影響を与えることはありませんし、治療法も確立しています。性機能障害や尿失禁も頻度は低いのですが、起こることもあります。
密封小線源永久挿入療法(シード療法)
生検のときと同じような方法で、放射性ヨウ素を密封した小さな粒(シード)を数10個ほど前立腺内に会陰部から挿入し、そこから出る放射線(ガンマ線)で照射を行う方法です。リスクの低い前立腺癌に対し適応があります。
専用の治療室で全身麻酔下に行いますので、入院しての治療となるため当院では行っていません。
当院の医師は2名とも以前の勤務先で十分なシードの経験がありますので、IMRTとの違いや両者のメリットに関してお話しすることや施設紹介をすることができます。