乳癌の放射線治療
発症は20歳台から80歳台まで広く分布しており、年々増加しています。乳がん検診が普及し早期に発見されることが多くなりましたが、しこりを自覚して受診される方も多いのが実情です。基礎から臨床までの研究が最も進んでいる癌のひとつで、いろいろな事がわかっています。しかし治療法の開発が精力的に行われており、数年で標準治療法が変化することもあります。
予後を大きく左右する様々な因子がわかっていて、これによって治療法も違ってきます。主な因子にリンパ節転移の個数、乳癌の大きさ、ホルモン受容体、サブタイプなどがあります。
治療の適応
大きく早期乳癌、進行乳癌、手術不能に進行した癌に分けられます。
早期乳癌
乳管内癌を含む早期乳癌は患者さまが多く、乳房温存療法のよい適応となります。治療法(標準治療)は乳房部分切除+術後照射(+ホルモン療法)で、抗がん剤や分子標的薬が追加されることもあります。
進行乳癌
乳房切除手術した後のリンパ節転移の個数により、術後に鎖骨上(首のつけね)と胸壁に照射を行う場合があります。手術前に抗がん剤や分子標的薬を行うこともあります。
手術不能に進行した癌
抗がん剤、分子標的薬やホルモン療法が主体となりますが、必要に応じて放射線治療が用いられます。
放射線治療の方法(乳房温存療法)
放乳房部分切除術の1~2か月後に放射線治療を行います。
現在の標準放射線治療は、切除された側の乳房全体に50グレイの照射を、5週間(25回)かけて照射します。また一定の条件を満たせば、3週間の短期照射も可能です。
この際に体内の肺や心臓に、できるだけ放射線がかからないように、接線照射法と呼ばれる斜め前方向からと斜め後ろ方向から乳房を照射します。
乳房接線照射の範囲と方法

齋藤勉、関口建次 他 著
ベストエビデンス放射線治療(金原出版株式会社)より抜粋
照射の回数と線量(乳房温存療法)
通常は2グレイずつ、週5回、5週間で合計50グレイの照射となります。しかし一定の条件(50才以上、抗がん剤なし、5cm以下の腫瘍でリンパ節転移なし)を満たせば、1回毎の線量を増やし、回数を16回に減らす短期照射も可能です。
なお、保険会社によっては、50グレイ以上の線量でないと、がん保険がおりないこともありますので前もって確認してください。
十分に切除したはずなのに、結果的に腫瘤ギリギリであったり、切除面(断端)に癌細胞が少し残っている場合、さらに若年者の場合には追加照射を5~8回行います。この際は癌のあった部分のみの照射となります
当院での放射線治療の特長
当院では乳癌患者さまの手術を年間900例以上と200例以上を取り扱う施設の属していた、30年以上の臨床経験がある2名の放射線治療専門医が診療に当たります。ひとりは日本乳癌学会制作の乳癌診療ガイドラインの作成委員を務めております。
乳癌の治療は長期に及ぶため、仕事を再開しながら放射線治療を受ける患者さまもいらっしゃいます。夕方の照射を希望される方はぜひご相談ください。
副作用(放射線治療時)
乳房温存療法は乳房を温存し、その整容性を保つために行われる治療です。したがって手術後の再発予防のためとは言え、照射により大きな副作用を残すようでは、この治療自体が成り立ちません。
放射線の副作用は軽微なものがほとんどですが、照射期間中に皮膚が赤くなったり、ひりひりするといった皮膚炎が多くの患者さまでみられます。これは治療期間が終了すれば、まもなくして回復します。
照射中はだるさや皮膚が赤くなったり、かゆくなったりしますが、これらも照射が終われば必ず良くなります。
副作用(放射線治療後)
数年間は汗が出にくくなりこともありますが、日常生活に支障はありません。
まれに治療が終了して数ヶ月後に、放射線肺炎と呼ばれる副作用が起こることがあります。空咳が出ることが特徴的ですが、胸部レントゲンやCTで診断ができます。通常数週間で症状がおさまります。