肺癌の放射線治療
肺癌は高齢者に多く、喫煙との関係が深い疾患です。米国では以前より禁煙活動が行われており、肺癌の発生は低下傾向ですが、わが国では増加の一途をたどっています。
肺癌は最も予後の悪い癌の一つで、切除できない状態で受診される方が多く、この場合では半数の方が、一年あまりで亡くなってしまいます。比較的健康な人を対象とする臨床試験でも、半数以上の方が2年以内に亡くなっています。
肺癌の治療
肺癌は小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分類されます。
小細胞肺癌は抗がん剤を中心とする治療が行われます。非小細胞肺癌では早期の場合は手術で、手術できない場合は放射線治療と化学療法を行います。
肺癌は高齢者でたばことの関係が深いため、肺気腫や慢性閉塞性肺疾患(COPD) といった呼吸器疾患を伴っている場合が多くみられます。これらの患者では、癌自体は切除可能でも、呼吸機能が低下しているために切除できない方もいます。
放射線治療(非小細胞肺癌) 切除可能な症例
これまでは切除可能な症例に放射線治療を行っても、切除不能の癌の治療成績とあまり差がない状況でした。
しかしピンポイントに3次元方向から放射線を腫瘍に集中してあてる体幹部定位放射線治療(SBRT)が、日本における研究を中心に開発されました。
SBRTにより大量の放射線をがんに集中的に照射するため、周囲の臓器は少ない線量で済むようになりました。このため切除可能な早期の肺癌では、外科的手術と比較しても同等といえる良好な生存率となっています。また癌以外の原因で手術ができない早期肺癌でも、良好な結果が得られています。
切除可能肺癌の照射範囲
齋藤勉、関口建次 他 著
ベストエビデンス放射線治療(金原出版株式会社)より抜粋
当院の切除可能な症例への放射線治療
当院ではIGRT (画像誘導放射線治療)の技術により、放射線をあてる位置の精度を高めて、SBRT(体幹部定位放射線治療)を行います。
正常な臓器などにあたる放射線は、最小限に抑えるピンポイント照射であるため、治療効果が高く、大きな副作用はありません。
照射後に放射線肺炎が出現することがありますが、空咳程度で呼吸苦などの症状が出ることは稀です。
当院の体幹部定位放射線治療の実際
放射線をあてるのは原則4回(48グレイ)で、期間は1週間程度です。しかし症例によって癌のある部位が異なりますので、周囲の正常組織の安全を見込んで、1回の線量を減らして照射回数を増やすこともあります。
治療中に痛みなどの苦痛はなく、1回の治療時間は30~40分ほどで、通院での治療が可能です。
体幹部定位照射
3次元方向からピンポイントで照射する
齋藤勉、関口建次 他 著
臨床からたどる放射線物理(金原出版株式会社)より抜粋
放射線治療(非小細胞肺癌)切除不能の肺癌
放射線と抗がん剤の治療が主体で、すでに転移が存在する場合は抗がん剤が主体の治療となります。
食道炎や白血球減少などの副作用が高度となりますので入院での治療となります。したがって通院治療を主とする当院の治療能力を超えるため、大きな病院での治療をお勧めします。
切除不能肺癌の照射範囲
齋藤勉、関口建次 他 著
ベストエビデンス放射線治療(金原出版株式会社)より抜粋
放射線治療(非小細胞肺癌)高齢者の肺癌
切除可能な状態の肺癌でしたら、通院での体幹部定位照射治療(SBRT)が可能です。
高齢者で切除不能の場合は、抗がん剤を併用すると生活の質(QOL) が大きく低下することになりますので、化学放射線療法は適応になりません。このような患者さまには、通院による放射線治療が可能な方も多くおられます。
胸椎や胸壁に癌が浸潤し疼痛を伴う場合、とくに上部胸壁に浸潤し神経を刺激して強い痛みを伴うとき(パンコースト腫瘍)は放射線治療は疼痛緩和に有効です。また呼吸苦や血痰を軽減することもあります。これらの場合、通院期間は4週から6週です。