外反母趾・足の外科

外反母趾・足の外科の紹介

『1569人の子供の足を計測した結果、半数以上の54%が合わない靴を履いていた。子供の98%は健康な足を持って生まれてくる。大人の60%は足の障害で苦しんでいる。それらの障害や足の変形は、靴が小さすぎたり、大きすぎたり、トウラインが先細りであったり、幅が広すぎたりする足に合わない子供靴を通して生じる。』

これは2000年に整形外科靴マイスターなどの靴教育で有名なドイツの靴産業連盟が発表した声明です。生活の中で歩行には靴は欠かさないものであり、世界的にも靴と足の痛みにおける密接な関係性が指摘されています。しかし靴の脱ぎ履きがほとんどない西洋文化圏に対し、我々日本人は靴の脱ぎ履きが非常に多い生活様式上どうしても脱ぎ履きしやすい大きな靴を選びがちです。しかし大きな靴を選択することは靴と足のフィットが得られないため靴の中での足の移動が生じます。これが靴擦れであり、痛みの大きな原因の一つです。また近年では外反母趾などの足の変形、タコやウオノメなどといった足の障害のみならず、運動習慣の一般化と活性化で若い方から年配の方まで足底筋膜炎といったスポーツに付随する痛みが見受けられるようになりました。
多くの足の痛みをお抱えの方は靴屋さんでゆったりとした靴を勧められ、医療機関に受診される患者さまの多くも靴の指導などは全く受けず、装具やインソール(靴中敷)などを勧められることで幅が広い大きな靴を選択せざるえないことも少なくありません。

「外反母趾・足の外科外来」って、なんだろう?聞きなれない外来名だな・・・と感じられる方も多いと思います。この外来では痛みや靴選びでお困りの方の少しでも手助けになりたいと考えております。保存治療ではテーピングや靴の指導といった一人一人に対応した治療いたします。そして残念ながら保存治療のみで対応できない方へは手術治療もご相談させていただきます。

保存治療と手術治療の2本の柱を持った積極的な医療を提供していくことで、保存治療をご希望の方や、手術を勧められているがお悩みの方、運動時の痛みで制限をかけざるをえない方に気軽にお応えしていけるように心がけさせていただきます。

外反母趾

病態

『外反母趾』は女性9:男性1で圧倒的に女性に多く、有病率は30%ほどと言われています。ハイヒールなどの普及や疾患に対する知識が広まったことにより、厚生労働省からも外来患者数は1984年から2011年で7倍に増えていると報告されていますが、手術に取り組む施設も非常に少なくまだまだ認知されていません。10年を超えた痛みで受診される方も少なくありません。
一般的には50歳前後から痛みなどの症状をきたすことが多いですが、靴を工夫されている方などはかなり早くからいらっしゃいます。また実際には小学生にも5%ほど確認されており、中学生くらいからローファーを使用することで痛みを覚えることもあります。
下の写真のように体重をかけることで大きく足の形が変わるため、それを考慮した治療が必須です。

また長期に患っている方では『外側趾障害』と呼ばれる親指と他の指が交差するような障害をきたしている方もいらっしゃいます。この状態からの治療はどうしても複雑になってきますので極力早期の手術が望ましい方もいます。

保存的治療

人間しか持たない特徴である「足のアーチ」の機能を回復することが必要です。このため足のサイズや幅に合わせた靴、テーピング、装具を指導しております。

手術治療

保存治療で改善されない痛みが強く、靴が履きにくい方は手術となります。また親指と他の指が交差すると増悪は年々進みますので、早期の手術をお勧めしております。 手術は症例に合わせて複数の方法で臨んでおりますが、一般的に①軽度から重度のものにはマン変法②超重度や交差してしまっている症例にはラピダス変法を行なっております。

① 重度外反母趾へのマン変法によるプレート固定(約1時間)

② 外側趾障害もある超重症外反母趾へのラピダス変法による髄内釘固定(約2時間30分)

(髄内釘使用は国内有数の使用実績です。)

手術治療効果

手術を行うことで外観的にも大きく改善します。痛みも術後4日ほどで沈静化することが多く、術後3ヶ月で多くの方は痛みなく日常生活を送られています。ただし両足同時手術や、複数指の手術、85歳を超えた方などでは経過に少し遅れがでます。

手術後の注意点

手術翌日から3週間までは踵歩行、以後は徐々に通常歩行に戻していきます。単純な手術の場合には1週間ほど、複数指などの複雑な手術の場合には3週間ほどの入院をお勧めさせていただいております。足は汗を非常にかきやすく、汚れやすいため、感染を予防するためにも創部が安定するまで安静と経過観察が必要です。骨癒合が得られるまでの期間(約3ヶ月)は、月1回もしくは2回の外来受診をお願いしています。
また足の手術を行うことで血液を戻すポンプ機能が一時故障します。手術後2ヶ月まではむくみが続きますので、接客業などの立ち仕事への復帰は2ヶ月が目安となります。
親指と他の指が交差するような障害をきたしている方には早期の手術をお勧めさせていただいております。これは重症になればなるほど足の形状は複雑となり、症状の一部が残りやすいためとご理解ください。

強剛母趾・扁平足・変形性足関節症などのその他の変性疾患も手術治療も行っております。

足関節外側靭帯断裂

陳旧例を中心に、前距腓靭帯と踵腓靭帯の再建手術を行っております。また初回の重症例でも3週間のキャスト固定した後に痛みや不安定性が残存した場合には手術を行うようにしております。術後は術翌日からの荷重歩行を許可するようにしており、術後3ヶ月でのスポーツ再開が目標です。距骨軟骨障害併発例には軟骨移植なども組み合わせております。

外脛骨障害(有痛性外脛骨)

内側縦アーチ保持を治療の第1選択としております。しかし年単位の痛みや扁平足のような後脛骨筋腱痛に悩まされ、Veitch分類typeⅡのような外脛骨が大きいものは内側縦アーチ保持といった保存治療では無効なことも少なくありません。手術は外脛骨部の表面を新鮮化し、足底外側へ移動させた状態で骨接合させています(後脛骨筋機能を保つためにも摘出手術は行っておりません)。術後3週間のキャスト固定後に歩行再開となります。

腓骨筋腱脱臼

大会前などで待機手術を希望される方には、運動中の脱臼を減らせるようにテーピング指導をしておりますが、保存治療での根治は得られません。このため当院ではスーチャーアンカーを用いた仮性嚢縫合を行っております。この術式では約5cmの皮切と仮性嚢までの展開で強固な安定化が可能で、腓骨筋腱溝の再建は行っておりません。低侵襲で疼痛も少なく、術後4週間で通常歩行を許可できております。

足関節骨折

腫脹や転位が強い場合には、エコー下神経ブロックにて一時的創外固定(Damage Control)を積極的かつ早急に行っております。関節面骨折がなければ術翌日から荷重許可できるよう強固な固定を心がけております。

踵骨骨折

Sinus tarsi approachを用いることでプレートを用いたMIS(最小侵襲手術)を行っております。この術式は受傷から1週間以内での手術が可能で、拡大L字進入よりも有意に皮膚侵襲も少なくなります。後療法などは以前と変わりませんが、非常に有益な手術法です。

リスフラン靭帯損傷

第2中足骨基部底側骨折(fleck sign)でリスフラン靭帯損傷と診断されますが、レントゲンのみでの診断は時に困難です。軽微な骨折でも非常に強い不安定性が確認されますので、足部腫脹が強く、疑いを持たれた際には是非ご紹介ください。軽症例では人工靭帯を用いた再建で術後3週からの全接地を開始しておりますが、重症例では関節固定スクリューなどを併用するため術後3ヶ月ほどの制限を要します。

外反母趾・足の外科 外来[PDFファイル]

担当医師

整形外科・足の外科部長
渡辺 淳 (ATUSHI WATANABE)

[第一病院]外科、[第二病院]リハビリテーション科(整形外科)


専門医インタビュー(人工関節ドットコム/外部サイト)

専門・得意分野 足の外科
外反母趾
四肢外傷・骨折
略歴 東京医科大学 医学部 卒業
資格・所属学会 日本整形外科学会専門医
認定運動器リハビリテーション医
日本足の外科学会 足の外科認定医
Orthotics Society Foot Control Trainer

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