作業療法士-常勤

私は新卒で精神科病院に就職後、老人保健施設に異動になりました。片麻痺や骨折、循環器や呼吸器の疾患の方々を担当することになり、身体機能の評価が不十分であること、検査データの解釈ができないことを痛感しました。また、通所や入所の方々がリハビリに受け身であることから、病院でのリハビリに興味を抱くようになり、スキルアップ目的で一般病院への転職を決意しました。当院の見学や面接で事務長やリハ科の責任者がとても丁寧に対応してくださり、安心して転職できました。

作業療法では目標設定やプログラム立案において、患者さまやご家族に希望や主訴、役割、習慣、環境などをお聞きします。日々の過ごし方や暮らしに対する考え方に着目し介入することで生活の質をあげることができると考えます。
私は以前担当させていただいた方との関りのなかで、重要な役割遂行は主体的な生活への原動力になることを学びました。
当院に長い間、呼吸器疾患で通院されていた80代の男性は、病院のすぐ近くの中華料理店の店主でした。ある日、自宅の階段から転落し、左腕の末梢神経と手指の腱を損傷されました。大学病院で手術をされ、退院後は当院で外来リハを実施しました。
リハビリ開始時は、前腕から手指の腫脹が酷く自動運動できませんでしたが、『中華料理店を再開すること』を希望され、社会復帰を目標にプログラムを実施しました。いつも「みんなが待っているから、お店をやりたい」「左手で中華鍋を持てるように」と言いながらプログラムに取り組まれ、料理店に弟子入りしたときのことや中華料理店を開業したときのことなどを話されました。ご自宅の厨房で少しずつ調理を再開していきました。中華料理店の店主としての彼にとってお店の再開は非常に重要であり、意味のある作業であると考えました。
しばらくリハビリを継続していましたが、手指の変形と感覚障害は残存しており、火傷が多くありました。私は食事の支度は可能でも、お店の再開は困難と思っていましたが、リハビリ終了から４週間後、彼は中華料理店を再開されました。お店にお伺いすると、笑顔で餃子を作っていました。
現在、呼吸器疾患が増悪し、休業されていますが、院内でお会いすると笑顔で挨拶してくださいます。